第31回岡山高校卒業式 式辞

2018/03/02

第31回 岡山高校卒業式 式辞

 卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。今日は、「どうやったら人生をうまく生きて行かれるか」という話をして、皆さんの門出を祝う言葉にしたいと思います。

 「人の長所は短所の裏返し」だとしばしば言われていますが、本当に的を射た言葉です。私は他人から「お前は情に厚すぎるから駄目なんだ」とよく揶揄されます。特別、他人に優しく接してきたという自覚はないのですが、確かに私は、つい「情にほだされる」。相手の振る舞いに困惑や悲しみが見て取れると、無理な譲歩を重ねてしまうのです。しかし、この私の「情に厚い」という長所が、視点を変えると、「私には冷静で客観的な判断が下せない」という短所に変わる。「人の長所は短所の裏返し」というのはこういうことを言うのです。

 この世はすべて、陰と陽の関係で成り立っています。表があれば裏がある。成功の数だけ失敗がある。これまでの光は陰に転じ、陰は容易に光に変身する。長所と思われていたその人間の資質が、状況に応じて、いとも簡単に短所に変化する。上手く行っている時は「長所は長所のまま」でうまくいく。でも「長所が短所として現れてくる場面では、どうすればよいのだろう?

 新しい自分を絶えず創り上げるのです。私はそれを「生き方のイノベーション」と呼んでいる。生き方を少し変えてみるのです。今まで付き合ったことのない異質なヒトと交わり、興味が全然沸かない本を読み、全く異なる発想を自分の中に取り込むのです。読んだことのない本を読み、今まで自分の友人の中にはいなかったようなタイプの友人と付き合ってみるのです。そこから新しい「生き方」の可能性が生まれてくるのです。異質なものを吸収することによって新しい自分が生まれ、「生き方のイノベーション」が可能になるのです。

 私はこう思うのです。「自分の力の内にあって変えられるものと、自分の力の内になくて変えられないものを峻別する必要がある」と。そして、「変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵」を手に入れる必要があると。「自分の力の内にあって変えられるもの」とは、思考、行動、努力など自分の思い通りにできるもの。反対に、「自分の力の外にあって変えられないもの」とは、感情、評判、立身出世、他者との偶然の出会いなどでしょう。他者との出会いを通じて、勇気と冷静さと知恵を通じて新しい自己を作り上げてほしい。

 人は弱い生き物。感情に流され、周囲の空気に流され易い。自分が生きる時代の波に乗るのはいい。しかし、自ら舵を取らなければ、結局荒波に飲み込まれることになります。他人任せにするのではなく、目的地を定めるのも、船を操るのも自分自身だと考えたほうがよい。自分の舵は自分で操るのが一番だから。

これを以て、平成29年度、第31回岡山高等学校卒業証書授与式の式辞とする。

平成30年3月2日
岡山高等学校 校長 鷹家秀史